株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」1993

 

セイコーエプソンのマイクロロボット システム手帳風に演出

1993年(平成5年)12月22日 日経産業新聞掲載

 わずか一センチ角で世界最小のマイクロロボットと九四年版のギネスブックに掲載されるセイコーエプソン(長野県諏訪市)の「ムッシュ」。

 光センサーで光りをキャッチし、光源に向かって進むホビー用の自律自走ロボットで、製品もユニークだが、システム手帳形式のマニュアルも個性的である。

 内容は四部構成になっており、性能や基本的な扱い方が記載されている第一部が、いわゆる普通の導入部分だ。第二部はマイクロマシンの情報や開発ストーリー、ムッシュに盛り込まれている先端技術を紹介。特に作家や研究者ら著名人によるコメントが面白い。

 第三部は使い方やメンテナンス方法、トラブルシューティングなどで構成。第四部は用語解説やサービス窓口に加えてカレンダーやメモなどの付録つき。

 五万円という価格設定から、高級な大人のおもちゃとして購入するユーザーも多い。そのため「自分が買った理由がわかるような、製品の補足ではないマニュアルを目指した」とプロデューサー的役割を果たした内堀法孝デザインセンター統括部機器デザインセンター長は、その狙いを語る。

 再生紙と再生皮革を使ったシステム手帳を形式にしたのは「呼んでもらい、所有していることが価値になるようなマニュアルにしたかった」ためと高柳秀範主任も説明する。部ごとに帯の色で分けて検索性を高めたり、小さな製品だけにマニュアルにある程度ボリュームを出すなど、きめ細かい工夫と演出もしている。

 折りたたみ式ページあり、カラーページありで楽しさを重視する一方、マイクロロボットに関する専門用語を用語集にまとめるなど、ユーザーの知りたい欲求にこたえられるような内容も持つ。 今後は「人が感じる多面的なモチベーションを引き出すマニュアル」を目指したいと内堀センター長。積極的にユーザーの心をつかむ役割を持たせたマニュアルの試みである。