パソコン わかりやすさと肥大化のはざまに
1994年(平成6年)5月19日 日経産業新聞掲載
マニュアルのわかりやすさが重要視され、必要な叙位右方を画面上で即座に入手できる「オンラインマニュアル」の操作が活発化している。
しかし、そうした努力の一方で、パソコンのマニュアルはユーザーにとって、読みこなすことが難しくなっているのも事実だ。
原因の第一は、パソコン本体の価格が下がりながらも、処理できる能力は急速に向上しているためだ。いわゆる「コストパフォーマンス(価格対性能比)」の膨張に、マニュアルが追い付いていけないのである。これは、技術革新が急速に進むコンピューターならではの苦悩といえる。 このところ急速に普及し始めたOS(基本ソフト)「ウィンドウズ」は、画面を見れば操作方法がわかるというのが売り物。
しかし、パソコンの初心者にとってはトラブルが起きたときに、ハードに問題があるのか、基本ソフトの部分なのか、アプリケーションソフトの操作方法なのか、さっぱりわからないという事態も発生している。 筆者も昨年暮れにパソコンを買い換えた時、ディスプレー、ウィンドウズを快適に使うためのボード、パソコン本体、メモリー、ハードディスクなどのマニュアルが山をつくり、読む順番に悩んでしまった。
パソコン本体のセットアップが終わったら、MS-DOSのマニュアルが6冊、さらにウィンドウズのマニュアルが4冊、よく使うワープロソフト「一太郎」のマニュアルが7冊。周辺機器を含めると合計20冊以上に達した。初めてパソコンを使う人なら、ぼう然と立ち尽くすしかないと思ったものだ。
確かに、何かのボタンを押せば、機能が使えるような電子レンジやビデオなど家電製品に比べると、パソコンは使用目的に合わせて自由に使える。このため、マニュアルの量が増えることは当然とあきらめるしかないのかもしれない。 目的別の分冊になっているのも、1冊の中で情報を探し出すよりは使い勝手がいいだろう。
しかし、パソコンが何者であるのかも漠然としており、メモリーやハードディスクなどの技術用語にさえ恐怖を感じる初心者ユーザーが、この膨大な情報の中から自力で自分に必要な情報をみつけるのは至難の技だろう。
昨年後半から、創刊が相次いだ初心者向けのパソコン雑誌を支えているのも、そうした悩めるユーザーたちだと言えよう。
パソコンが進化するにつれ、自分で自在に活用できる人と、そうでない初心者の間には大きなギャップができ始めた。自分で必要な情報をつかみとり、進歩させる力。そうしたものを、メーカーがサポートしなければならない時代に入ってきた。
