株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」1994

 

関心高まるコンテスト

1994年(平成6年)8月18日 日経産業新聞掲載

 ユーザーへの優しさを競う時代に ユーザーに親切なわかりやすいマニュアルの重要性を常に考えているのがテクニカルライターだ。

 しかし、自分たちが作っているマニュアルが本当にわかりやすいものかどうかが、点数で測れないジレンマも抱えている。それは評価基準が明確化されていないことに原因がある。

 そこで制作者のプロの目でマニュアルを評価しようと、マニュアルコンテストが開催されてきた。その一つを主催するのは、マニュアル制作者が多く参加する団体STC(ソサエティ・フォア・テクニカル・コミュニケーション)東京支部。

 会員によって組織された実行委員が評価基準を作り、優秀賞、優良賞を選ぶ。 4回目となる今年は約50点が応募し、13点が入賞した。審査員による丁寧な評価コメントが役に立つと、家電、コンピューター、ソフトウェアなどの分野で、毎年、応募する企業が多い。

 評価のポイントは8つのカテゴリーからなり、目的、構成、内容、ライティング、グラフィックス、デザイン、製本・印刷、全体としての効果のそれぞれの項目が、バランス良く制作されなければならない。

 見た目がきれいなカラー刷りでも、ユーザーが欲している情報が書かれていなければ、構成や内容でポイントを上げることができないというわけだ。 第4回の優秀賞として、IBM、PS55、IBM Thinkpad 220のユーザーガイド(制作アイメイト)、今日から使えるWindows(マイクロソフト)、全自動洗濯機取扱説明書(日立製作所)の4点が選ばれた。いずれも図解を上手に用い、構成とレイアウトで必要な情報をすぐに引けるよう検索性を良くしている。

 どれも製品を購入して、最初に使うマニュアルであることに注目したい。ユーザーが最もつまずきやすい最初の入り口の重要性を認識し、改善を重ねてきた結果だからだ。また、洗濯機の取扱説明書では洗剤の上手な入れ方や洗濯物の入れる順など、賢く使いこなすための情報が加えられているのも評価された。

 各種のマニュアルコンテストへの関心が高まり、ユーザーに優しいマニュアルを模索するために、STCの評価基準など、既存のマニュアルコンテストのノウハウも盛り込んだ「優良マニュアルの審査基準に関する調査研究報告書」が3月にパーソナル情報環境協会から発行され、より具体的なコンテストの基準作成も始まっている。

 ユーザーを無視した機能開発競争から、カスタマー・サティスファクションを競う時代に入り、わかりやすさを明確化するための業界全体の取り組みの行方に期待したい。