取扱説明書などの評価 品質向上には第三者のチェック必要
1995年(平成7年)5月18日 日経産業新聞掲載
製品そのものの品質評価に比べて、製品情報を提供する取扱説明書やマニュアルの評価は、一部の大手メーカーを除いて体制が整っていない場合が多い。その理由はコスト面とともに、手法が確立していない点にある。 日本電信電話(NTT)が主な顧客であるソフトウェア開発会社、NTTソフトウェア(本社横浜市)は、開発を担当する各システム事業部とは別に、開発合理化推進本部を置いている。製品評価が難しいソフトウェアについて、開発の合理化と品質をチェックするのが目的だ。
同本部は1989年から独自のチェックリストをもとに品質を評価し、改善活動に結び付けている。開発仕様の評価などから出発したチェックリストは改版を重ね現在、マニュアルを含めたドキュメント(文書)の評価にまで範囲を広げている。 マニュアルの評価は同本部の担当者がわかりやすさ、表現、用語、体裁などを添削し、執筆者に返す。文書を書くのが苦手な開発部の若手社員も、第三者の評価を受けて意識が変わってきたという。チェック活動で得たノウハウは、社内ニュースのテクニカルライティング講座の実例に役立てている。
このようにある程度の規模の企業なら、第三者的なチェック体制を採用して組織的な品質改善が可能だ。しかしモノづくりに追われる中小企業では難しい。そのうえ今年7月のPL(製造物責任)法施行に向けて、製品や取扱説明書の品質保証にどう対応したら良いか中小企業の悩みは多い。
「中小企業の異業種交流会でも、PL関連書籍や保険会社主催のセミナーで危機感をあおられた企業経営者の質問が多い」とマニュアル制作の実務経験を持つスタッフとともに企業のコンサルティングをしている渡辺三夫法律事務所の渡辺弁護士は語る。PL法に関する基本的な知識が少なく、警告表示や取扱説明書の整備が重要との認識があっても、方法が分らない中小企業がほとんどだ。 「資力の乏しい中小企業が生産ラインを含めた品質保証を見直すのは、現実には難しい。コスト的に負担が少なくて済む警告表示や取扱説明書の整備から始めるのが現実だ」と渡辺弁護士は助言する。 同時に、従来の制度との違い、注意すべき点など、自社の現状に合わせた基礎知識を得るために、法律事務所の利用を薦める。社内に専門組織を持てない場合には、外部の専門家を活用して品質評価をすれば良い。 いずれにせよマニュアルの執筆者以外の第三者のチェックが品質を向上させ、顧客へのサービスにつながることを認識すべきだ。
