株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」1995

 

PL法来月施行 警告イラスト説明、擬人化は疑問

1995年(平成7年)6月15日 日経産業新聞掲載

 7月1日に迫ったPL(製造物責任)法の施行に向けて、通産省や経済企画庁は相次いで消費者向け資料を作成し配布している。消費者の関心の高まりを考慮し、取扱説明書やマニュアルのPL対策も進んでいる。事務職、工作機、計測器、がん具、インテリアなど各業界団体からPLに対処した安全表示のガイドラインが発行され、企業はこれらに準拠しながら取扱説明書を作成し始めた。

 ガイドラインには、警告表示の図記号や絵文字(ピクトグラフ)の使い方が示されているものが多い。しかし取扱説明書で実際に運用する際は、使い方に工夫が必要だ。ガイドラインに表示されていても、警告や注意マークがいたるところに出てきたら、ユーザーは本当に気を付けるべき重要な注意事項を一目で把握できない。注意事項をわかりやすく表現するために、イラスト類を含めた適正な表現の検討が必要だろう。

 5月20日に開かれた日本テクニカルイラストレーション協会主催のシンポジウムでも、PL対策などをテーマに取り上げ、約140人の参加者を集めた。協会常任理事でテクニカルイラストレーションの専門会社アクシスコーポレーションの真次洋一社長は、「業界のガイドラインは出そろってきたが、取扱説明書独自の警告マークと併用していくべきかなど具体的に示されていない点があり、現場の担当者は迷っている。今後は取扱説明書でどのように対応するのか、よりきめ細かい業界の標準が必要」と語る。

 またここ数年、家電製品の取扱説明書を中心にカラーにしたり、イラストを使うなど見やすさ、親しみやすさを重視して改善してきた。しかしこうした取扱説明書の中には、警告の個所でも製品を擬人化したイラストを使っているものがある。親しみやすさを狙ったつもりでも、使い方を誤ると深刻な危険性があるという事実が薄れてしまう可能性があると、真次氏は指摘する。図のように擬人化せずに、危険な状況を伝える技法はあるし、「本当の意味でユーザーとのコミュニケーションのあり方を見直すべき時期にある」と語る。

 イラストや図記号、絵文字は、文章で表現するのに比べて伝わりやすい。だがユーザーにとって何を第一に伝えるべきなのかを検証しながら、適用していかなければ、結局はメーカーからの押しつけの安全表示でしかないと言えるだろう。