株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」1995

 

テクニカルコミュニケーター 求められる幅広い知識

1995年(平成7年)7月13日 日経産業新聞掲載

 パソコンをはじめとする情報機器が、職場や家庭に普及しつつある。かつてのように製品に強い興味を持つ限定されたユーザーから、幅広く多様な層への利用者が広がりつつある。またマルチメディアのような多彩な情報を、初心者でも扱える状況になってきた。このような背景から、わかりやすいマニュアルや取扱説明書を作成するテクニカルライターに求められる知識や技術がより広範囲になっている。

 通産省の指導のもと調査・報告活動をしている財団法人パーソナル情報環境協会は、3月「テクニカルコミュニケーターの資格認定に関する調査研究報告」をまとめた。テクニカルコミュニケーターは、マニュアルや取扱説明書作成にかかわる管理者、ライター、編集者、デザイナー、イラストレーターなどを指す。現在、テクニカルコミュニケーターを育成する社会的な教育体系や評価システムは整っておらず、技術情報を的確に伝える専門家に対する社会的な認識は薄い。

 同報告書では、テクニカルコミュニケーターに必要とされる知識と技術を表のような6つに分類した。各分類は細分化しており、ライティング技法なら、日本語文法、文章表現、用字・用語などの技術に分かれる。資格制度の等級としては、一から三級の三段階、各級で必要とされる技術の重みづけも提言している。

 マニュアル作成の現場では、テクニカルライターであっても情報をわかりやすく伝えるためのビジュアルな知識が必要となるし、製品に添付される部品の一部と考えれば、評価やコスト管理の知識も欠かせない。最近ではPL(製造物責任)の基本的な知識も重要だ。こうしたトータルな知識と技術を持った専門家を育成することが、資格制度の目的ともいえるだろう。

 報告書では、国内企業の資格認定制度の事例として、総合電機メーカーの制度も述べられている。同社はアシスタントテクニカルライターからチーフエディターまでの五段階。計画、設計、執筆など七つの評価項目で点数を付け、クラスを認定している。  こうした認定制度は当のテクニカルコミュニケーターにとっては技能を磨き、正当な評価を受けるための手段であり、管理者にとっては人材活用の参考となる。  作成技術を評価する方法をどうするかが、今後の課題だろう。特に映像や動画を含めたマルチメディア環境下での、テクニカルコミュニケーターの役割と評価方法については、教育界を含めた議論が期待される。

■ 技術要素の区分
(1)企画・構成
(2)ライティング技法
(3)ビジュアル表現
(4)製作に関する技術
(5)付帯する技術
(6)評価・管理