株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」1996

 

PL法施行から1年

1996年(平成8年)7月4日 日経産業新聞掲載

 製造物責任法、いわゆるPLが施行されて一年を迎える。施行前は「PL法が施行されると訴訟が増える。取扱説明書に警告などを書いていないと訴訟で不利になる」と取扱説明書の改善が急がれた。

 以前に比べ注意や警告のページが増え、利用者に注意を促す記述が目立つようになった。 渡辺三夫法律事務所の渡辺弁護士は「PL法が実際に施行されて以来、利用者からの苦情申し立ては一時的に増えたようだが、製造物責任にかかわる訴訟が目立って増えてはいない」と指摘している。

 理由は「米国のようにすぐに裁判に持ち込まれるといった危ぐを持った人々もいたが、PL法と情報公開がリンクしている米国と、情報公開がベースになっていない日本では状況は異なる」からだ。 渡辺氏は書籍「取扱説明書のPL対策」を監修したことから昨年七月以降、取扱説明書の内容や製作会社とメーカーの間の契約に関する相談が相次いだが、現在は一段落しているという。

 この1年を振り返って、渡辺氏は「PL法の最大の功績は製品の安全性やマニュアルの警告表示を見直す機会になったことだ」と語る。品質評価部門を中心に取扱説明書を改善し、チェック体制を整えたメーカーも多い。

 「大手メーカーの取扱説明書は確かにこうした取り組みが功を奏して改善されている。中小メーカーになるとまだ意識が薄い企業も多く、差がある。地方は取扱説明書に関する情報も少なく、手つかずの状態だ。これまで訴訟が起こらなかったからと安心するのは禁物」と指摘する。

 製品によっては説明書は用紙一枚であるようなものもあり、取り扱いの手順と注意や警告が雑然と書かれているケースもまだ多い。注意や警告情報を整理して読みやすくするだけでも違ってくるだろう。 利用者の事故を防ぐ手だてとして取扱説明書の整備は製品そのものの安全性の見直し・改善に比べ、コストが少なくて済む効果的な方法だ。継続的な見直しと改善が望まれる。