株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」1998

 

シンポに質改善への熱気

1998年(平成10年)9月29日 日経産業新聞掲載

 去る9月3、4日に「テクニカルコミュニケーションシンポジウム'98」(TCシンポジウム)が、新宿の工学院大学で開催された。マニュアル制作やインターフェイス開発などテクニカルコミュニケーション技術のレベル向上と、参加者の相互啓発や情報交換の場としての同シンポジウムは今年で10回目。マニュアル制作に関わるメーカーの担当者、制作会社、フリーランス、研究者、学生など、参加者は2日間で1000人を超えた。

 電子マニュアルの開発技法や、マニュアルの品質改善の取り組み、電子配信などの事例発表に人気が集まった。テクニカルライティングの基本やビジュアル化技法などをテーマとした有料セミナーにも300名近くの参加者があり、不況の中にあって、各社が将来を見据えた技術向上を図り、現在の取り組みについて最新情報を求めていることがうかがわれる。

 TCシンポジウム全体の今年のテーマは、「モノ、メディア、コミュニケーション………人とモノとの対話」と、インターフェイスなどを含むコンピュータと人との関わりを強く意識したもの。
基調講演もテーマ性と関連したプロダクトデザイナーとしてコンピュータ分野でも活躍する名古屋市立大学芸術工学部教授の川崎和男氏による「人とモノとのディバイネーション」。ディバイネーションとは、「期待や夢の分割から統合」という概念化をデザイン手法にするための新造語。人とモノとの関係をどのようにとらえ、扱っていくかが今後のマン・マシン・インターンフェイスの核となるが、親和性・親密性・信金性をいかに合わせていくかが大切だと川崎氏は説く。

 「川崎氏のデザイン設計の考え方は、多くの参加者の刺激になったようだ。人とモノとのコミュニケーションを本当に突き詰めたモノ作りを考えることが、来るべき2000年に向けて、われわれテクニカルコミュニケーターがなすべきことだと思う。枠を取り除き、裾野を広げ、多くの分野の人が参加するシンポジウムになることが、今後の課題になっていくと考える」とTCシンポジウム'98プログラム実行委員長の柘植繁氏は語る。

 製品の情報を伝える媒体であるマニュアルにとどまらず、製品と人とつなぐための情報やデザインのあり方を探る試みが、より活発になることを期待したい。