「分かりやすさ」技能に客観評価
1999年(平成11年)6月22日 日経産業新聞掲載
多くの企業がリストラや組織の見直しに取り組む中、個人の力を図り、かつ伸ばすための目安としての各種検定への関心が高まっている。企業側にとっては評価のためのモノサシとなり、個人にとっては自分の力をアピールするための武器となる。
マニュアルや解説書などを利用者に向けてわかりやすく執筆することを問う「テクニカルコミュニケーション技術検定(TC技術検定)3級試験」が2月に実施された。主催のテクニカルコミュニケーター協会によると、第2回となった今回は、受験者は500人を超え、電気・精密機械メーカーでマニュアル制作に関わる人や、制作会社で執筆やディレクションを行っている実務担当者が主となっている。
従来は技術者が開発の片手間に作成することが多かったマニュアルだが、顧客満足度の向上を目的にマニュアル専門の担当者が制作・管理することが、メーカーなどではこの十数年で一般的になってきた。しかし比較的新しい職種であるため、専門職としての資格制度の整備などはほとんどが手付かずだった。
「あるメーカーのドキュメント部門は、マニュアル担当者全員に受験を義務づけているという。60名以上の団体受験を申し込んだ企業も2社あり、マニュアル制作に関わる人の技能評価に、企業が役立てているようだ」と同協会検定事務局の金子浩美氏は説明する。
検定試験は、それぞれ60分ずつの学科試験と実技試験からなり、企画・構成、ライティング、制作技術などを問う。3級は実務経験2年程度を目安としたテクニカルライターを対象としているが、受験者の経験年数は実務経験のない人から、10年以上と幅広い。今回の試験で合格率が最も高いのは、経験1年未満となったが、これは基礎をきちんと身につけたかどうかの違いが現れた結果のようである。
「検定用に作成したガイドブックを、社内研修に利用している企業もあると聞いている。検定は技能評価だけでなく、人材育成にも効果がある。2000年中には、さらに経験年数が高い人向けに、より高い技能を問う級の検定も行う予定」と問題作成や採点などを行っているTC技術検定専門委員会の高橋尚子委員長は語る。
これまであいまいだった「わかりやすさ」を表現できる技能を図り育成できれば、取扱説明書に限らず、ビジネス文書や業務マニュアルなどの分野にも応用がきくだろう。幅広い分野と、より高度な技能の両面での広がりを期待したい。
