デジタル時代の日本語を議論
1999年(平成11年)10月5日 日経産業新聞掲載
東京新宿の工学院大学で、9月2、3日に「テクニカルコミュニケーションシンポジウム'99」(TCシンポジウム)が開催された。マニュアル制作に関わるメーカーの担当者、制作会社、フリーランス、研究者、学生など、1000名を超える参加者が集まった。
「11回目となる今年のシンポジウム全体の統一テーマは、『「人vsデジタル」を「人withデジタル」へ』。このテーマにそって慶應義塾大学の村井純先生にインターネットに関連して、人とデジタル技術の行方を基調講演していただき好評でした」とプログラム委員長の大和田潤治氏は話す。人とデジタル技術の関わりが増え、より良い関係性を築くために何をすべきかが問われているのだ。
こうした視点に基づいたコミュニケーション技術を磨くためのセミナーや、電子化マニュアルの潮流としてPDFやXMLなどを取り上げた分科会に注目が集まった。
「サポートセンターの声をマニュアルにどのように生かしているか、日本語の表記のゆれをどう扱うかといったテーマの分科会は、初めてのものでしたが参加人数も多く、積極的な意見交換が行われました。新しい知識を得る良い機会となった、仕事で悩んでいることの解決のヒントとなったという感想があがっています」と大和田氏。
シンポジウムの主催であるテクニカルコミュニケーター協会の海保博之会長も、「人とデジタルという、統一テーマが秀逸でした。デジタルとの関係が問い直されている時期なのでしょう。一方で、にわか日本語ブームというか、日本語の関心が一般の人にも高まっています。悪いことではないのですが、言葉は道具に過ぎませんから。道具としてこだわるのはほどほどにして、現実の場で表現していくことが重要です。人(読み手、ユーザー)あっての表現技術ですから、伝える人も読み手も共通の場で情報を交換し、討論する場がもっともっと必要でしょう」と語る。
インターネットやパソコンが普及し、新しい用語や知識に直面して、多くのユーザーがとまどっている。従来の日本の枠組みにとらわれることや、英語表現をそのまま訳するのではなく、デジタル化が進む新しい時代の日本語について、送り手と読み手が一緒に作り上げていくことが求められているのだろう。
12月3日に同シンポジウムをコンパクトにしたものが大阪でも開催される。「初の試みですが、東京で好評だったセミナーや分科会をいくつかもっていく他、大阪で独自の研究発表も予定しています」と前出の大和田氏。議論の場が広がっていくことを期待する。
