株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」2000

 

わかりやすいマニュアルの国際標準

2000年(平成12年)3月14日 日経産業新聞掲載

 国際的な競争力を得るために、ISO(国際標準化機構)規格の認証を受けるようと組織全体で取り組む企業が増えている。品質管理や品質保証のためのISO9000の認証を受けるべく、取扱説明書作成についても取り組んでいるOA、コンピュータメーカーも少なくない。

 今年はさらに一歩進んで、ユーザーに視点をおいたISO13407にも関心が高まりそうだ。これはコンピュータのハードウェアとソフトウェアにおいて、人間中心設計のプロセスを規定する国際規約。昨年にはドラフトが発表されるなど、早いペースで標準化への作業が進められ、欧州では、今後ISO9000などと同様に運用されると見られている。

 国内でも、人間生活工学研究センターなどが中心となり、調査とガイドラインの作成に取り組んでいる。対象となる製品は、システムを含むコンピュータ製品全体であるため、パソコンや小型情報機器はもとより、インターネットのポータルサイトなども含まれる。

 ISO13407で注目する「人間中心設計」とは、使う人間、つまりユーザーに視点をおいて設計することだ。当たり前のように思えるが、従来の技術者のシーズ指向によって開発されてきた製品への反省の意味もあるのだろう。機能競争に走り、結局、横並びで同じような機能がついているものの、結局使わない機能ばかりが増えてきたこれまでの状況を変え、使いやすさを商品の魅力として差別化することが、人間中心設計をとる意味なのだ。海外ではユーザー中心主義から、さらに一歩進めた"顧客中心主義"とマーケティングに近い開発手法も登場しているという。

 国内でのISO13407の調査活動などにも参加する静岡大学情報学部情報科学科の黒須正明教授は「使い勝手のよさを表現する、ユーザビリティについては、日本では狭い意味でとらえられている。製品やマニュアルのユーザービリティテストとして、改善すべき点の発見のために行われてきた。これからはユーザーが使ってみていいな、また使いたいな、と思うようなポジティブな側面が必要だ」と述べる。そうしたマニュアルや画面などに表示されるユーザーガイダンスの使いやすさを改善するために、どう取り組んでいるかに、企業の成熟度が反映されると黒須教授は語る。

 本来、製品について独自の工夫を加え、機能を高めたり、便利さを追求するのは日本人の得意とする技術だったはずだ。機能が複雑になるコンピュータ製品において、取扱説明書やガイダンスの重要性に気づき、攻めのポイントとして取り組む企業が、より多くのユーザーを獲得することになるだろう。