株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」2002

 

何を伝えるのか、制作に戦略必要

2002年(平成14年)9月18日 日経産業新聞掲載

  9月5、6日に東京の工学院大学で、「テクニカルコミュニケーションシンポジウム2002」が開かれた。マニュアルや取扱説明書の制作に携わる関係者が集まる年に1度のシンポジウムで、14回目を迎える。

 今年の全体のテーマは、「“わかりやすさ、使いやすさの次に考えること〜使える楽しさ!”」。この数年、不況の影響で制作環境が厳しくなり、最低限のコストで、わかりやすさを追求する作り方になっていた。ここでもう一度、ユーザーの立場になり、製品なりサービスを使う楽しさを伝えるマニュアルを考えようとした」と、プログラム副委員長の川井正幸氏は狙いを語る。

 両日の参加者は約1000人。5日には「日本マニュアルコンテスト2002」の結果発表もあり、展示された受賞作品に多くの参加者が足をとめた。紙マニュアルの家庭製品部門では松下電器産業の家電製品取扱説明書の料理集「SPEED COOKING」が優秀賞と審査員特別賞を受賞。使う人が楽しくなる事例などが評価された。

 紙のマニュアルから、電子マニュアルへの移行が進む状況を反映して、電子マニュアルが増えていることも特徴だ。マニュアル・オブ・ザ・イヤーは、ソニーのVAIOに添付されている電子マニュアル「CyberSupport Ver.3.1」。ヘルプの画面から説明されているソフトウェアを起動して体験しながら学べるなど、電子マニュアルの特性を生かした試みが評価された。

 インターネットが普及し、ユーザーへさまざまな情報をWebで配信する事例も増えている。このシンポジウムでも、Webのコンテンツの使いやすさ、楽しさを、マニュアル制作技術と結び付ける試みもあった。「コンテンツのライフサイクルを理解して、戦略的に制作のガイドラインを作ることが重要」と指摘したパネリストのソシオメディア篠原稔和代表取締役の発言が印象的だった。コストに捉われたり、その場、その場の取り組みに追われるのでなく、ユーザーに何をどう伝えたいか、足元をもう一度見直して戦略を練ることが、この先のマニュアルやWeb制作に求められていることを、考えさせられるシンポジウムだった。