使う人の立場考えた情報提供を
2003年(平成15年)10月1日 日経産業新聞掲載
マニュアルや取扱説明書などの制作技術や最新情報の発表やディスカッション、セミナーなどを行う「テクニカルコミュニケーションシンポジウム2003」がこのほど開催された。15回目を迎える今年のテーマは、「人とモノとの快適コミュニケーション〜情報をデザインする」。
主催のテクニカルコミュニケーター協会会長の海保博之筑波大学教授は開会のあいさつの中で、「シンポジウムが始まった当初はマニュアルが中心だったが、IT社会が進展し、扱う領域広がってきている。信頼のおける情報をどうデザインするかが、制作者に求められている」と説明した。
多機能化し、しかもインターネットによってさまざまな情報を連携して扱うことができる最新の情報機器。使いこなすための説明をどのように構成し、使う人の役に立つ情報を提供できるかがテクニカルコミュニケーターという職業人に求められている。
基調講演を行った竹村真一東北芸術工科大学教授は、「これまでの社会では商品、取扱説明書、広告など、モノと情報がそれぞれ切り離されて存在していたが、ユビキタス社会が実現されると、商品と情報がつながっていく」と語った。その上で「商品やマニュアルなどの作り手は、人とモノとのコミュニケーションプロセスを理解、モノを通してどう世界経験をするのかを考えなくてはならない。これまでの意識をリセットする必要があるだろう」と指摘した。
インターネットの世界の中だけでのバーチャルな情報世界と、実際に人が生活し製品を使うリアルな場での情報をどう融合するのか、情報デザインのセンスが求められていることを示唆していると感じた。
同シンポジウムで開催される「日本マニュアルコンテスト」でも優秀賞を受賞する作品は、ユーザーがどのように使うか、使い方のイマジネーションを広げるような工夫がされているものが多かった。特に電子マニュアルの部門ではナビゲーションの方法を工夫し、製品やサービスの情報をレベルや目的に応じて検索できるようにしている。
インターネットが普及し、情報収集の仕方、利用のスピードが変わってきている。シンポジウム参加者の約1000人は皆、人とモノが快適にコミュニケーションするための橋渡し役として、何ができるのかを模索しているようだった。
