株式会社ハーティネス

コラム「マニュアルNOW」2004

 

「利用者にわかりやすく」模索続く

2004年(平成16年)10月29日 日経産業新聞掲載

  マニュアルや取扱説明書など製品と利用者をつなぐ情報を制作している企業やフリーランスの人々が、制作技術や最新情報を交換する「テクニカルコミュニケーション シンポジウム2004(以下TCシンポジウム)」が9月2、3日、東京・新宿の工学院大学で開催された。事務局によると昨年に比べて100人近く多い、1000人を超える参加があり、基調講演、パネルディスカッション、セミナー形式の特別セッションなどどれも盛り上がったという。

 現在、マニュアルは従来の紙に印刷された形態のものから、電子マニュアルと呼ばれるデジタル形態のものが増えつつあり、利用者はパソコンの画面や製品の液晶画面で見ることが多い。利用者の層も広がっているため、情報をよりわかりやすく、的確に伝える技術が模索されている。TCシンポジウムでもこうした電子マニュアルの制作方法や評価について扱った特別セッションなどに参加者が多かった。

 基調講演ではプロダクトデザイナーの深澤直人氏が、「行為と相即するデザイン」をテーマに、携帯電話のデザインなどの作品を例に、人とモノのかかわり、デザインのアイデアについて講演した。人が知っているのに気づかない無自覚な行為の中にどのような意味があるのかを、多様な写真を投影しながらプレゼンテーションし、人とモノとのかかわりについて示した。単に使いやすいだろうという安易なデザインは人と道具のバランスを崩すという指摘は、「わかりやすさ」とは何かを考えるテクニカルコミュニケーターの仕事とも共通する課題だろう。

 電子化などデジタル情報を利用する一方で、製品が並んだ時に購買者に製品について伝えるためのパッケージデザインに、どのような情報を盛り込むかといったテーマへの関心も高まり始めている。パッケージ記載のマニュアル表現をテーマに扱ったパネルディスカッションでは、家電製品、健康関連製品、飲料メーカーのパッケージデザイン担当者が、物理的に限られたスペースの中で、どのようなコンセプトで利用者に伝えようとしているのかを事例とともに発表した。

 これまでソフトウェアや情報機器の取扱説明書、マニュアルの制作技術が中心となっていたTCシンポジウムだが、製品のジャンルを超えて、ユーザーにより伝わりやすい形、表現が模索され始めていることが感じられた。