残念な「iPod」の取扱説明書
2005年(平成17年)2月9日 日経産業新聞掲載
若者だけでなく、中高年も含めた幅広い層にユーザーを増やしているアップルコンピュータの携帯音楽プレイヤー「iPod mini」の取扱説明書を読んだ。この製品は、スタイリッシュなデザインとシンプルな操作性が大きな特徴だ。指をなぞるだけで操作できるクリックホイールの使いやすさのように取扱説明書も親切だといいのだが、残念ながらそうはなっていない。
製品パッケージより一回り小さい四角形をした「ユーザーズガイド」は、スタイリッシュなデザインだが、開いてみると文字が小さく、図も少なめだ。初めて使う人に、親切に使い方を教えてくれるものになっていない。たとえばクリックホイールは慣れればとても便利だが、ボリュームを大きくしたいときにどのように指で回せばいいのか、ユーザーズガイドの中では文章のみの記述で、図で示されていないのでピンとこなかった。あれこれ触ってみて新しい機能を使いこなしてしまう「ケータイ世代」ならばこれで良いかもしれないが、そうでないユーザーには操作性の良さを生かすための情報がもう少し欲しい。
より詳しい情報が記載されている「チュートリアル」が添付のCDに入っていることが記載されているが、CDのどのフォルダに入っているどのファイルなのかは示されてない。チュートリアルを見ても特に詳しく、親切に書かれてはいなかった。一般的なAV製品の取扱説明書のような説明を期待すると、がっかりするだろう。
このような取扱説明書になっているのは、全世界へ製品展開する際に共通化したフォーマット、内容で作成していることがその理由だろう。その国ごとの状況に合わせ、ユーザーにとってわかりやすい表現に書き換えるローカライズの作業は費用もコストもかかるが、そうした努力は必要ではないだろうか。たとえば、楽曲をダウンロードして購入できるiTunesミュージックストアに関しては、ユーザーズガイドでは「一部の国のみ利用可能です」と書かれているが、「日本国内では現在(200○年○月現在)、利用できません」といった記述にした方が、わかりやすく親切だ。
身近で親しみやすい製品だからこそ、マニュアルも「こんなに親切なマニュアル見たことない」というようなローカライズされたものが添付されるようになれば、デジタル製品が本当に変わりつつあることを誰もが実感できるようになるだろう。
